◆RSウイルス感染症ってなあに
RSウイルス感染症は、RSウィルスによって呼吸器に感染を起こす感染症で、感染力や繁殖力が非常に強く、くしゃみや咳による飛沫感染、ウィルスが付着した場所を触るなどの接触感染でどんどん広がっていきます。症状は風邪のような軽い感冒症状から、上気道症状(鼻水、くしゃみ)下気道症状(咳、呼吸困難)まで様々な症状があります。
RSウィルスはトータルで約1カ月ほど感染力が続くため、保育園や幼稚園などの集団生活において感染が避けられないウィルスでもあり、2歳までにほぼ100%の乳児が感染しますが、特に生後6か月未満で感染すると重症化することが示されています。約7割の乳児は発熱や軽い咳、鼻水などの上気道炎の症状が数日続いたあとで治るのですが、残りの約3割は気管支炎や肺炎などの呼吸器が苦しくなる下気道炎をおこし、重症化した場合には、無呼吸、急性脳症なども引き起こし、入院して酸素投与や人工呼吸器が必要となる場合もあり、年間3万人の乳児が入院を要します。入院患者の約4割が生後6か月までの赤ちゃんで、中でも多いのが生後1か月までとされています。RSウイルス感染による乳児の入院は、基礎疾患を持たない場合も多く、そのため生後早期から予防策が必要とされています。
以前はRSウィルス感染症は秋から冬に流行するものでしたが、近年では流行期が定まらない上に、RSウィルス感染症に対しては有効な抗ウィルス薬などの治療薬がありません。そのため、予防が非常に重要となり、早産時や先天性心疾患などの基礎疾患のあるハイリスク児を対象としてワクチン接種の保険適用が認められています。
しかし、元気に産まれた赤ちゃんでも生後まもない時期にRSウィルス感染症にかかると重症化して入院となってしまうケースも多いため、お母さんのおなかの中にいるうちにお母さんにワクチンを接種することで、赤ちゃんに免疫をつけてあげて乳児をRSウィルス感染症にかかりにくくしようとする(または感染しても軽症で済むようにする)ワクチンが「アブリスボ®筋注用」で、日本でも2024年1月18日に製造販売承認が取得されました。
◆RSウイルスワクチン「アブリスボ®筋注用」の妊婦さんへの接種時期について
・妊娠 24~36週の妊婦に接種が可能ですが、接種時期によってワクチンの有効性が異なるため、より有効性が高い時期である妊娠28週以上妊娠36週以下での接種が望ましいとされています。
(1)生後6ヵ月までの「重度のRSウイルス関連下気道感染症」に対するワクチンの有効性
妊娠 24週以上 28週未満の接種では43.7%の減少
妊娠 28週以上32週未満の接種では88.5%の減少
妊娠32週以上36週以下の接種では 76.5%の減少
(2)医療機関の受診を必要とする「RS ウイルス関連下気道感染症」に対するワクチンの有効性
妊娠 24週以上28週未満20.7%の減少
妊娠 28週以上32週未満の接種67.4%の減少
妊娠32週以上36週以下の接種では57.3%の減少
◆ RSウイルスワクチン「アブリスボ®筋注用」の安全性について
承認前に行われた臨床試験においては、462人の日本の妊婦も参加しており、有効性と安全性が示されています。早産や出生児の低出生体重との関連は示されておりません。また、米国では、RSウイルスワクチンはすでに多くの妊婦に接種されており、大規模な接種データに基づき、米国予防接種諮問委員会(ACIP)から妊娠中にRSウイルスワクチンを使用することの安全性についての情報が公開されていますが、その報告によると、2023年10月~2024年3月にRSVワクチン接種をした320,400例の妊婦について、22例が早産リスクを認めたものの、たとえRSウィルスワクチン(アブリスボ®筋注用)を接種しなかったとしても、同様の率での早産は起こりえることなどから、ワクチンのみが早産の原因として直接的な原因でないことが示唆されています。ほかの有害事象としては、ワクチンによる疼痛・全身症状を41例を認めましたが、その他重篤な障害はありませんでした。以上のように、RSウイルスワクチン接種には副作用が「絶対にない」とは断言はできませんが、接種することによるリスクよりもベネフィットの方が上回ることが明らかになっています。
◆ RSウイルスワクチン「アブリスボ®筋注用」の接種費用について
接種費用:33,000円(税込)
※ 接種前にお電話にて在庫を確保してからの接種をお願いしております。
※ 接種日を決めてお電話にてご予約をお取り下さい。(水・日・祝は休診です)
※ 保険適用外のため費用は全額自費となります。
※ 当院では接種を推奨する目的で安価な費用設定としております。