診療時間について

 
午前
午後

9:30-13:00/15:00-19:00
(受付は診療終了30分前で終了)

※土曜日は9:00-11:30、12:00-14:30(11:30-12:00休憩)の診療です。

休診日:水曜・日曜・祝日

詳細はこちら

〒221-0802
横浜市神奈川区六角橋1-6-14
白楽メディカルセンター4階

東急東横線「白楽」駅徒歩1分

詳細はこちら
    フェイスブック

HPV検査単独法とは

子宮頸がんは、若い世代の女性のがんの中で多くを占めるがんで、日本では、毎年約1.1万人の女性が罹患し、更に毎年約2,900人の女性が亡くなっています。
患者は、20代から増え始め、30代までにがんの治療により子宮を失ってしまう人も年間に約1,000人もいます。
しかし、前がん病変や初期がんで発見できれば、子宮頸部の一部を切除するだけで子宮のほとんどを残すことができ、治療後に妊娠・出産も可能であるため、HPVワクチンの接種による予防と、定期的な子宮頸がん検診の受診による早期発見・早期治療が何よりも重要です。

最近では、子宮頸がんの大部分がHPV(ヒトパピローマウイルス)によって引き起こされるということが明らかになってきています。HPVは性交渉により感染するウィルスで、一度でも性交渉経験のある女性なら生涯に感染する確率は80%以上とされる、ごくありふれたウィルスです。ほとんどの人は感染しても自己免疫力などで1~2年以内に自然に消退するのですが、原因はわかりませんが、一部は感染が持続して、数年~数十年かかって浸潤がんへ進展します。前がん病変である異形成や上皮内癌に至る前では、罹患しても無症状であることが多いのが特徴で、ある程度ゆっくりと進展するということが最近のゲノムレベルでの研究で明らかになってきています。そこで、子宮頸がんの検査を細胞診で行うのではなく、その前段階のHPVの有無を調べようというのがHPV検査単独法になります。

国によっては、細胞診とHPV検査を同時に両方とも行う国もありますが、そのようにした場合に、HPV陽性と細胞診陽性、HPV陽性と細胞診陰性、HPV陰性と細胞診陽性、HPV陰性と細胞診陰性の4パターンが最初に出てきてさらにその先に色々な結果が生じるというように、ある意味とても複雑な結果になってしまうので、我が国としてはその後の追跡検査の把握の重要性を考慮して、HPV検査単独法を用いることになりました。

HPV検査単独法の検査の流れ

子宮頸がんにおいて細胞診とHPV検査で検査の内容は変わりますが、ブラシで子宮の入り口をぬぐうという検査方法は変わりがありませんので、検査の痛みはこれまでの細胞診と同じです。HPV検査を実施するに当たっては、細胞を採取する際に、細胞を保存液の中で保存することのできる液状化検体により検体採取を行い、しばらくの間、検体を保管します。

そしてこのHPV検査単独法では、HPV検査だけを行うのではなく、HPV検査で陽性であった方に対して、同じ検体を使って細胞診でトリアージを行います。(HPV陰性である場合には、細胞診は調べません。)HPV検査で陽性であった場合の細胞診の実施に当たっては、HPV検査を行った検体を保管しておいてその検体を使うため、HPVが陽性であった場合でも、患者様は再びご来院頂く必要はありません。液状化検体であるので、1回採取した検体を保管しておけば、HPVが陽性であった場合に、後から細胞診を医療機関が追加オーダーするだけで患者様には何もして頂かなくても細胞診の検査を追加実施することができるからです。

  1. 【HPV検査実施】 HPVに感染しているかどうかの有無を調べます。HPV陰性(-)の場合には、ここで検査は終了です。
  2. 【細胞診】HPV検査陽性の場合のみ、同じ検体を使って細胞診が医療機関側で追加オーダーされます。同じ検体を使うので、実施に当たっては患者様は来院などの必要はありません。細胞診でNILM(異常なし)の場合には、ここで当年度の検査は一旦、終了です。ただし、HPVが消滅していくかどうかの経過観察のために、1年後に再度HPV検査(追跡検査)を受診する必要があります。(追跡検査の対象者には1年後に横浜市からお知らせが送付されます。)
  3. 【精密検査】細胞診でASC-US(軽度病変以上)の場合には、さらに精密検査を受診して頂く必要があります。

HPV検査単独法の対象となる方(30歳~60歳の方)

子宮がん検診をHPV検査単独法で実施する年齢は30歳~60歳の方となっています。
なぜ20代の方はHPV検査単独法の対象外となっているかというと、20代の方はHPVに感染しても一過性のことが多く、感染してもほとんどが自然消滅してしまうことが明らかになっているからです。
また61歳以上の方については、海外でもHPV検査を実施している国がほとんど存在しないため、エビデンスがあまり存在していません。海外においても一般的に30歳から60歳の年齢の方がHPV検査の対象となってきており、これらのことから、20歳から29歳と61歳以上の方については、従来通りしっかりと細胞診の検査を行いましょうということになっています。

HPV検査単独法のメリットとデメリット

HPV検査単独法では、約8~9割の方においてHPV検査の結果で陰性となることが見込まれており、HPV検査の結果で陰性であった大部分の方々は、次回の検診は5年ごとの節目年度(35歳、40歳、45歳、50歳、55歳、60歳)となります。このように、ほとんどの方が5年に1回の検診で済むため、受診者の方の負担が少なくて済む一方で、検診の間隔を5年とすることについては否定的な意見もあります。
とりわけ、婦人科受診の機会損失が大きく指摘されております。子宮内の疾患には子宮頸がんだけではなく、子宮内膜症(癌化しやすいチョコレート嚢腫を含む)や子宮筋腫など様々な疾患があります。
例えば、当院では、これまで2年に1回の子宮がん検診(細胞診)において、患者様から特にご費用を頂戴せずに、同時に子宮内超音波検査を行わせて頂いておりましたので、子宮頸がん検査のタイミングでそのような子宮内膜症(癌化しやすいチョコレート嚢腫を含む)や子宮筋腫などの疾患が見つかることも多かったのですが、これらの疾患が見逃されてしまうのではないかということが懸念されます。
そのため、HPV検査単独法で5年に1回の子宮頸がん検査で済むようになった方々におかれましては、これまでより積極的に婦人科検診を受診するようにして頂ければと思います。
特に、不正出血やおりものの異常などがあるときは、保険診療で費用の負担が少なく検診を受けることができますので、すみやかに受診をするように心がけて下さい。

HPV検査のメリット

・【負担軽減】HPV検査の結果が陰性であれば、2年に1回の受診が推奨されている細胞診に比べて、次の検査は5年後で済むので、受診者の負担軽減にもつながります。受診者の約8~9割が5年ごとの受診となることから、自治体の医療費のコスト削減にもつながると見込まれています。
・【早期発見】HPVへの感染は、子宮頸がんになる数年前から起こることが多く、子宮頸がんのリスク保持者であるHPV検査陽性者が追跡管理されることで子宮頸がんの早期発見・早期治療に繋がります。
・【受診率の向上】がん検診の未受診理由として、「受ける時間がないから(21.2%)」が上位にあげられているため、受診者の約8~9割において検診の頻度が5年に1回と減ることで、受診率の向上が見込まれるとされています。

HPV検査のデメリット

・【機会損失】30歳~60歳の方のうちのほとんどにおいて、子宮がん検診が5年に1回となることで婦人科を受診する機会が減り、子宮頸がん検診のタイミングで同時に見つかることの多かった子宮内膜症(チョコレート嚢腫)や子宮筋腫などの他の子宮内の疾患が見逃されやすくなることが懸念されています。さらに、5年に1回となることで、子宮頸がんや婦人科疾患への関心が低下する可能性も指摘されています。
・【長期不安】HPV感染のうちの多くは感染しても子宮頸がんに至らないことが明らかになってきています。HPV検査で陽性だった場合には、感染しても子宮頸がんに至るかどうか定かではない上に、治療法もないHPVへの慢性的な感染に対して追跡検査を受け続けなければならないことで、患者が長期間にわたって精神的な不安を抱えなければならないことがデメリットとしてあげられます。
・【偽陽性率】HPV検査単独法では、癌を検出できる割合が0.5%上がりますが、偽陽性率(異常がない方や問題のない方が要精密検査と判断される度合い)は4.2%上がるというデータがあります。

 

(令和5年度指針改正等に関する自治体説明会資料より抜粋)

おわりに

横浜市ではHPV検査単独法が30歳から60歳の方を対象として、令和7年1月から全国に先駆けて開始されることとなりました。その後、令和7年4月からは埼玉県の志木市や和光市などでも同じHPV検査単独法がはじまることになります。そのため、医療機関としてもまだ未知数である部分もありますが、当院でも、常に最新の情報を患者様にお伝えできるように、スタッフ一同、日々研鑽を積んで参りたいと考えております。ご受診にあたっては、QRコードのついた受診券とマイナ保険証などの本人確認書類が必要となりますので、どうぞお忘れなくご持参下さい。

なお、横浜市のHPV検査単独法の制度の概要や費用、受診後の対応などについて詳しくはこちらのページにてご説明しておりますので、ご来院前にご一読下さい。