結果が正常であれば先天性胎児異常は100%ないのですか?
胎児スクリーニングの結果に問題がなかったからといって、先天性胎児異常がないということを100%保証することは出来ません。形態的でない異常(例えば、知的障害、視覚障害、聴覚障害・・)や、小さくて超音波検査ではわからなかった形態異常、超音波的特徴のないもの(ダウン症や鎖肛等)は、胎児スクリーニング検査で見つけることは出来ません。小腸閉鎖や四肢短縮症などの異常は、妊娠後期になってはじめて検査が出来ます。胎児の位置や母胎の肥満、羊水量などもスクリーニング検査の結果に影響します。
とはいえ、一般的に重い胎児先天性異常のうちの70~80%は、胎児スクリーニングで見つけることが出来ると言われています。そのため、スクリーニングの結果が正常であれば、先天性胎児異常の可能性は低いと考えられます。
スクリーニング検査においては、「何か異常がありそうだ」と疑う症例を拾い上げることが大切です。胎児スクリーニングの中でも特に胎児心奇形の診断は難しく、例えば出生後早期に手術を必要とする重症心奇形さえ出生前に異常所見を拾い上げられないことも珍しくはありません。
したがって、所見を見つけることが出来ない可能性もあるということを、検査いただく妊婦さんにもご理解を頂くこともまた大切です。
もし異常が疑われたら、どうすればよいですか?
産科診療において先天性異常を疑った際には、その方のお住まいの地域の事情に合わせて、その精査や出産後の管理が可能な周産期センター、大学病院などに紹介します。
通常の産婦人科診療においては、先天性異常を疑う症例を拾い上げ、適切な施設に紹介するということに重きが置かれています。紹介された周産期センターでは、超音波専門医や産婦人科医が胎児全体の精査と母胎の診察を行います。
重度の先天性異常が見られた場合、産科医は小児科医と連携を行い、分娩施設や生後必要となる治療法について検討します。説明は妊婦さんだけに行うのではなく、可能な限りパートナー同席のもとで行われます。出生後の赤ちゃんにとって最善の治療が行えるようにします。
胎児スクリーニング検査を敢えて受けないことは可能ですか?
あらゆる女性は年齢に関わらず、重い先天性異常を持った赤ちゃんを出産する可能性があります。しかし、その確率は2~3%と低いものです。ほとんどの胎児は正常なので、そのリスクは低いです。
しかも検査をしても必ず発見できるとは限らず、胎児スクリーニングの結果が異常なしであっても、出生後に、先天性胎児異常であるとわかることもあります。逆に超音波検査で異常が疑われて、出産後正常であることがわかれば、取り越し苦労をしてしまうこともあります。さらに、染色体異常が疑われれば、羊水穿刺などの検査を選択することも視野に入ってきますが、この検査には胎児の流産につながるリスクもあります。
このように、胎児スクリーニング検査には長所だけではなく、行うことによるデメリットもあります。また、個人的な思想などから、性別や先天性胎児異常について、出産前に知ることを望まない方も多くおられます。どのような理由であっても、胎児スクリーニング検査を受けないという選択をすることはもちろん可能ですので、その場合は、医師までお申し出ください。