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今回は、残念ながら流産となってしまった方、もしくは切迫流産と診断されて心細い思いをされている妊婦さんのために、流産・切迫流産についてまとめたいと思います。

後述致しますが、流産の原因は多くは胎児の側にあり、受精卵の段階でその運命がきまっています。ですから、お母さんは自分のことをせめないで、切迫流産の場合は安静に過ごすことを心がけてください。ストレスもよくありませんので、くよくよ考えたり、自分を責めてはいけません。残念ながら流産となってしまった場合には、次の妊娠を楽しみに待って過ごしましょう。

流産とは?

流産とは、妊娠したにも関わらず何らかの原因で妊娠が継続できない(赤ちゃんが死んでしまうこと)状態のことをいいます。妊娠12週未満の流産が多く、流産全体の80%を占めます。

流産の症状

主に出血と下腹部の痛み、張りなどが見られますが、ほとんど症状がないケースもあります。

流産の頻度

妊娠初期に流産に至る確率は妊娠した方の約8~15%前後と統計があり、6~7人に1人は流産を経験することになります。

流産と年齢

流産する確率は年齢により変わってきます。流産の確率としては、以下のような確率といわれています。

20歳代 8~20%
30歳代 20~25%
40歳代 30%

年齢を重ねるにつれ、健康な卵子を排卵することが困難になり、受精したとしてもうまく細胞分裂できず流産してしまいます。

流産の原因は?

妊娠初(早)期(12週まで)に起こった流産の原因は、ほとんどが胎児の染色体異常(遺伝子異常)です。つまり、受精卵の段階で流産の運命が決まっているのです。

お母さんが動きすぎたり、立ち仕事や感染症によって子宮緊縮がおこるケースもありますが、多くの場合には、お母さんに原因があるのではなく、赤ちゃん側にあります。

受精卵の染色体異常などによって、赤ちゃんが育つことができないことが理由なのです。したがって、医師の指示に従い仕事を休み、運動を控えて安静にしても流産を防ぐことは難しいのです。ですから、流産してしまったお母さんはどうぞ自分を責めないでください。

原因についてはよくわかってはいませんが、一般的に切迫流産の出血の原因としては下記のような理由が考えられています(流産に進行する場合は染色体異常)。

胎盤後血腫

受精卵が着床するときに胎盤と子宮の間に出血が生じ血液が溜まり血腫となってしまう状態です。出血が増加すると胎盤が剥離してしまう危険性があるので絶対安静が必要となります。

頸管無力症

子宮の入り口である頸管の力が弱く、成長した胎児を支えることができず子宮の入り口が緩んでしまうことです。

絨毛膜下血腫

絨網膜の下に血液が貯留する状態です。絨網膜下血腫だからといってすぐ流産になるわけではありませんが、大きくなってしまうと切迫流産、流産の原因となりますが、ほとんどは吸収されて問題なく継続できます。

子宮頸部円錐切除

子宮頸がん初期の段階で行われます。子宮頸部円錐切除は子宮の入り口である頸管を円錐状に切除する方法で妊娠時に頸管が短くなる傾向があり、注意が必要です。

子宮口~絨網膜羊膜における炎症

細菌性膣炎カンジダ性膣炎などが子宮頸管・子宮まで炎症が広がり切迫流産を起こすことがあり、さらに胎児を包む絨網膜羊膜に炎症を起こし子宮収縮が促されることがあります。

流産の種類

原因による分類

1.人工流産

人工妊娠中絶のことで、母体保護法指定医により母体保護の目的で行われる手術です。

2.自然流産

人工妊娠中絶以外の手術の有無に関係なくすべての自然におこる流産のことです。

3.化学流産 (chemical abortion)

妊娠反応は陽性なのに、超音波で妊娠(胎嚢等)が確認できる前に流産してしまった状態のことです。

症状による分類

1.稽留流産

近年この稽留流産が増加しています。ストレスも大きな原因となっていると考えられています。

ある程度成長はしたが胎児心拍は認めず死亡している状態ですが、腹痛や出血、つわりの症状がほとんどない状態です。明らかな自覚症状がないので、外来の診察で初めて確認されることが多いです(妊婦の精神的ショックは大きいです。)

週数によっては入院して手術(子宮内容除去術)を行うのが原則とされていますが、昨今、外来で経過をみて自然に排出されることを期待することが多いです。しかし、外出中・仕事中・夜間等の出血等の緊急事態が多く、自然に経過をみるのも論議されております。

子宮内容除去術を行うことにより、子宮内膜を傷つける可能性が完全には否定しきれないため、当院ではまずは自然に排出されることを待ちますが、私の場合は2-3週間排出されないようであれば、患者様の心理的な負担なども考えて、 子宮内容除去術を 行わさせて頂くこともあります(患者様との話し合い、希望を聞いて決めます)。

2.進行流産

出血・腹痛より始まり、子宮内容物が外に出てきている状態です。

流産の進行具合による分類

1.完全流産

子宮の内容物がすべて自然に出てしまった状態です。(出血・腹痛は治まっている場合が多く、経過観察で良い状態です。

2.不全流産

子宮内容物の排出が始まっているが、まだ子宮内に残存し出血・腹痛が続いていることが多く、子宮内ソーハを行う場合が多いです。

3.化学的流産・生化学的流産

妊娠反応は陽性なのに、超音波で妊娠(胎嚢等)が確認できる前に流産してしまった状態です。受精しても着床が継続しない状態です。

受精卵がいつもの月経のように自然に体外に排出されるため、自覚症状はほとんどありません。妊娠反応をしなければ、普段から月経不順の方は妊娠と気づかず月経が遅れている、くらいに考えてしまうことが多いです。

流産の兆候(サイン)

  • 出血(ただし、着床時出血のこともあります)
  • 下腹部痛、張り
  • 胸の張りが急になくなった
  • つわりが急に楽になった
  • 基礎体温が下がった
  • 破水(水っぽいおりもの?)
  • 下腹部冷感 etc

※気になったら早めに病院で診察を受けてください!

流産の出血

不正出血は見極めが難しいです。前述した様に着床時出血であったり、子宮がんやクラミジア、ポリープなどの原因もあるので受診して確認してください。

感染による流産

妊娠初期の流産の原因は染色体異常がほとんどを占めますが、ウィルスや細菌が原因になる場合があります。

風邪、B型肝炎、サイトメガロウィルスは胎児感染し、胎児死亡や重篤な障害が残るケースがあります。クラミジア、梅毒、ヘルペスなどの性感染症は、感染による炎症を起こしやすく、流産を免れても母子感染を起こす可能性があります。

切迫流産

切迫流産とは、妊娠22週未満の時期に出血などの症状があり、「流産しかかっている状態」のことです。

妊娠12週までの切迫流産に有効な薬剤はないと考えられており、ほとんど安静など経過観察で対処しております。回復には絶対安静が条件です!

切迫流産になったら

まずは産婦人科などの医療機関を受診し、きちんと治療を行いましょう。

大切なのは、自分を責めないことです。そして、安静にすることです。家の中でじっと過ごすことにストレスを感じる場合があるかもしれませんが、「私が安静にすることでおなかの赤ちゃんが毎日すくすく育っていくんだ」とポジティブに考えて、インターネットでベビー用品を眺めたり、名づけの本を読んだり、産後の離乳食のレシピを調べたりと、安静生活を楽しむ工夫をしましょう。

自宅安静について

自宅安静というと、どこまで安静にすればよいかわからないという方が多いですが、私の考える自宅安静とは下記の通りです。

仕事

デスクワークであっても仕事は休みましょう。お腹の中の赤ちゃんを守ってあげられるのはあなただけです。仕事は代わりになる人をお願いしましょう。まわりに助けて~!と叫んでしまいましょう。自宅安静が必要と判断した場合には、職場に提出する診断書を書くことが出来ますので、遠慮なく申し出てください。

トイレ

トイレに歩いていくのは全く問題がありません。例外として、トイレに行くのに毎回、階段の上り下りがある場合には、階段の上り下りが負担になることがあるので、トイレのある階に布団を移動させましょう。

食事の支度

台所に立ち続けることは体に負担がかかるので、パパに頼むか、短時間で食事の用意が出来るレトルトや宅配サービスを利用しましょう。また買い物はパパに頼むか、ネットスーパーなどを利用しましょう。

掃除洗濯

掃除はおなかに負担がかかりますので、必要最低限にとどめましょう。自分の体を第一に考えて、しばらく掃除しなくても人間は死にません。多少汚くても、家族には我慢してもらうか、家族に掃除をお願いしましょう。

性交渉

性交渉は子宮収縮につながるので、いけません。医師から通常の生活に戻ってよいといわれた後も、おなかを圧迫するような体位は控えましょう。

判断に迷ったら

自宅安静か、入院かの判断は、体の状態だけによるものではありません。「上の子供がいるのでなかなか安静にできない」「自営業なので家族に遠慮して家の中で休むことができない」など、生活環境も考慮して決めます。個人的なことだからと遠慮せずに、積極的にあなたの生活状況を医師に相談してください。

医師は、総合的に判断して方向性を決めます。

流産の予防法は?

  • 重い物を持たない
  • 激しい運動を避ける

ただし、度を越えた運動不足はかえって子宮や卵巣の血流を悪くし、黄体機能不全や子宮内膜機能不全の原因になるので体に負担をかけない程度で適切な運動が必要です。

タバコやアルコール、コーヒー(カフェイン)、香辛料などの刺激物の過剰摂取は控えた方が良いです。

下腹部の冷えの対策として、特に冬は腹巻やレッグウォーマー、厚手のソックスなどを使用し身体を冷やさないように気をつけましょう。

流産後の妊娠

医師により判断は異なりますが、最短で生理を1回過ぎれば大丈夫といわれています。

流産により、残っている残留物がなくなり流産後は子宮内がきれいになって妊娠しやすいといわれています。